桐ver5って? 1998年 2月15日更新

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 1986年に、管理工学研究所より登場した「日本語データベースソフト」でMS-DOS版の最終バージョンである桐ver.5は、1994年1月に登場した。

 表計算ライクでわかりやすいユーザーインターフェイスをもち、表や帳票を自由に作ることができる。また、任意の位置にデータを挿入できる機能、日本語で記述できる一括処理(マクロ)は、ほかのデータベースソフトにはない特徴となっている。

・そもそもデータベースソフトとは

・「表計算」と「桐」との比較

・「桐」で使用するファイルの扱いに関する考え方

・桐ver.5に至るまで(桐の歴史)

・桐ver.5の仕様




そもそもデータベースソフトとは

 その昔、「ワープロ」「表計算」「データベース」が「パソコン3種の神器」と言われた時期がありました。
少なくとも事務処理にパソコンを使う場面において、この3つが使えればほとんどの仕事はこなせるでしょう。
 データベースとは、ある一定のルールに従って設計された枠組みの中にデータをランダムに入力していき、必要なときに必要な情報を取り出したり、加工(集計)したりして出力するためのソフトです。
 事務処理の仕事においてはほとんどの場合、一連の仕事の中で最後の処理は印刷という作業です。
「ワープロ」や「表計算」は、最初から画面上に印刷結果をイメージしながら、作業をすすめていくのが普通です。「データベース」では、最初にデータを入れる枠組みの設計(桐では表定義という)が必要です。(桐では、後から設計変更が自由にできますが、ある程度はしっかり設計しておいた方があとで困らない。)
 その枠組みに生のデータをランダムに入力していき、後で必要に応じて自由自在に検索・集計します。印刷の書式は最後に考えます。また、「表計算」ではややもすると、印刷書式ごとに同じデータを入力したり、同じ書式で違うデータを印刷する場合同じ書式をいくつも作るはめになることがありますが、「データベース」では、入力データは一つであり、それを必要に応じて加工し、自由な書式で印刷するので無駄がありません。
 もちろん「表計算」ソフトでも、データベース的な処理は可能であり、実際に利用しているユーザーもたくさんいます。しかし、より高度なデータ処理(検索、絞り込み、並べ替え、集計、複数のファイル間でのやりとり等)や思い思いのレイアウトで印刷をする(入力したデータを骨までしゃぶる)ような使い方をするには、やはり「データベース」ソフトをおすすめします。
私は「3種の神器」を下記のように使い分けています。
・ワープロ→文書作成(扱うデータは文字中心)
・表計算→簡単な集計表(扱うデータは数値中心)、シュミレーション(データを修正すると瞬時に再計算してくれるところがうれしい)
・データベース→大量のデータ(文字、数値)を検索・並べ替え・集計し自由自在に加工し、データや印刷物として出力している。




「表計算」と「桐」との比較

 数あるデータベースソフトの中で「桐」はどちらかというと、Accessに代表される正当派リレーショナルデータベースソフトの範疇の中では異端児かもしれません。Accessは、アプリケーション・システムの開発を目的としており、「桐」は、「123」や「エクセル」等の表計算に近いイメージで使えるデータベースソフトです。だからといって、「桐」がデータベースソフトとして劣っているという意味ではなく、だからこそ逆に一般のパソコンユーザーにとっては、とっつきやすいソフトであるといえるでしょう。しかも、桐を使ったVAR業者が数多くあることが証明しているように、定型業務システムを組むために「一括処理」という優れたマクロ機能を備えていることも「桐」の大きな特徴のひとつであります。
 しかし、いくら「表計算」に似ているとはいえ、やはり決定的な違いがあります。
1.扱えるデータ量が断然違う。
 どちらかというと「表計算」では、扱えるデータ量はメモリの容量に依存するが、「桐」ではディスクの容量に依存します。そのため、同じ性質のデータはすべて1つのファイルにまとめることが可能であり、しかも違うファイル同士のデータのやりとりも容易です。(マスタファイル、トランザクションファイル)
2.「表計算」は、「例外処理」が得意。「桐」では「定型処理」に向いている。
 データの性質(文字か数値か計算項目かどうか)は、表計算では「セル単位」に決定されますが、「桐」では列単位(フィールド、桐では項目という)で決定されます。「桐」ではかなり柔軟に変更できるとはいえ、「表計算」のように計算式を入れているところにいきなりデータを入力したり、そのセルだけ計算式を変えたりというのは容易ではありません。
 ちなみに、桐ではAccess等と違って項目に計算式を埋め込むことができます。
(例:[単価]と[数量]は入力項目で、[金額]の項目計算式に[単価]*[数量]という式を設定すると、[金額]の項目は自動計算され、入力もできなくなる。)
3.日本人の使うソフトとして、関数や一括処理コマンドのほとんどが日本語で記述することができる。
 昔のパソコン黎明期に、一般のユーザーでもあの難解な英語もどきのBASICコマンドを覚えなくてはパソコンを使えないという時期がありました。その時期、多くの人がパソコンは何でもできるという夢を抱いていたのに、BASICはその期待をいとも簡単に打ち砕いていったのでした。そのなごりか知りませんが「国産の表計算ソフト」でも関数にアルファベットを使うものがあります。英語を知らない人にとってはやはり、@SUMより#合計、@ROUNDより#四捨五入のほうが理解が早いと思われます。(桐では関数は頭に#が付き、変数は&が付きます。)
 世の中のパソコンユーザーには英語もローマ字も中学校以来忘れちゃったという人もいるのですよ。日本語関数の表計算ソフトってあるのでしょうか?エクセルや123の日本語版は関数も日本語にしてほしかった?
 また、桐ではアルファベット表記に慣れた人のために、いくつかの関数はアルファベットでも表記できることを付け加えておきます。
4.一括処理(マクロ)が強力で、容易に高度な業務用定型ソフトを構築できる。
 桐の一括処理コマンドは日本語により表記され、いくつかのコマンドを組み合わせてひとつの機能を実現するものではなく、ひとつのコマンド自身が関連した機能や制御までも行うマクロパッケージのようなものとなっています。そのため、開発速度も速くメンテナンスも容易であり、DOS版桐では、多くのVAR業者が「桐」を使って専門業務用ソフトを開発しています。また、一般ユーザーでも一括処理を使えば手軽にマクロ的処理ができるため広く活用されています。




「桐」で使用するファイルの扱いに関する考え方

 「桐」を知らない人のために、「桐」で使用するファイルの中で主なものの扱い方を説明し、おおよその基本概念を理解していただきたいと思います。
よく使うファイルには、表(拡張子.TBL)、帳票(拡張子.FRM)、一括処理コマンドファイル(拡張子.CMD)があります。

 表(.TBL)は、データファイルそのものでありこの枠組みを設計(桐では表定義という)することが、一番最初の仕事です。簡単に言うと項目名(フィールド名)とデータ型(文字か数値か)を決めることだけです。しかし、項目名を決めないでもデータを入力することは可能です。新規作成すると自動的に項目名はA、B、C、D〜という風に決められ横に並んで表示されます。ただし、「表計算」に慣れた人にとって、このA、B、C、Dは変更できないものと思いこんで、すぐ下のレコード行の1行目に項目名らしきものを入力される方が時々いらっしゃいますが、それはまちがいです。A、B、C、Dはあくまで仮の項目名であり、ある程度データ入力をしたら再定義で正式な項目名に変更しましょう。表定義ができたら、初期メニューから表形式編集を実行して実際のデータを入力していきます。また、「表計算」に慣れた人は、印刷結果を最初からイメージしているので、「桐」で不必要に空白行の挿入(故意かどうかは別として)をする方がいらっしゃいますが、これも無意味ですので削除しましょう。
さらに、集計行を自分で挿入することも必要ありません。行集計という機能を実行すると自動的に集計行が作られます。ただし、これは1時的なものであり、データとしては保存できません。(保存するときは、書き出し機能を使います。)また、行集計の他に「桐」には転置集計というとうてい表計算ではマネのできない集計機能も備えています。

 帳票(.FRM)は、画面や印刷のレイアウトを定義したファイルで、 (画面用帳票は昔のカード型データベース、印刷用帳票はワープロの文書に別ファイルから差込印刷することをイメージして下さい。)そのレイアウトにそって表(.TBL)のデータを画面表示したり、印刷したりします。帳票ファイルの中には、データは存在しません。
「画面用帳票」にはカード形式、画面伝票、「印刷用帳票」には、表形式、伝票形式、タックシール形式等があり、高度な出力が可能です。帳票ファイルは初期メニューの帳票定義を選んで作成します。
ただし、表(.TBL)ファイル単体でも、桐の高度なデータ処理は実行可能であり、普通の一覧表印刷であれば特に帳票(.FRM)ファイルさえも必要としません。(表の中の一覧表印刷機能でも、かなり高度な印刷ができます。)表の方で整列や選択などを実行した後、画面に表示された状態をそのまま反映して帳票印刷や一覧表印刷をします。

 一括処理コマンドファイル(.CMD)は、BASIC等でプログラムを書くように 表(.TBL)や帳票(.FRM)等のファイルの扱いをコマンドにより記述したファイルで、これを作成することにより、高度なプログラミングが可能です。表計算のマクロみたいなものですが、表データとは別ファイルになっております。

 表(.TBL)と帳票(.FRM)が別ファイルとなっていることで、帳票をいくつも作れば、ひとつの表ファイルからいくとおりものレイアウトの帳票で印刷できたり、ひとつの帳票を利用していくつものファイルからデータを選んで印刷したりすることができます。表(.TBL)ファイルにも帳票(.FRM)ファイルにも計算式を埋め込むことができ、どこにどのように設計するかを考えることが重要だと思います。

 この基本的概念は、Windows版になっても変わりありません。


 桐は印刷部分に力を入れているソフトで、桐の機能としては印刷の部分がよく取りあげられますが、データベースの基本となる整列、選択、検索等のデータ処理部分においてもかなり強力で、これらをマスタすることが桐使いこなしの第1歩となると思います。
 Windows版になるとDOS版でも強力だった印刷部分がさらに強力になって登場してきました。しかしながらMS-DOSの安定性、信頼性、処理速度の面を考えると、それほど印刷にこだわらない、ネットワークを使用しない、ということであれば、DOS版桐ver.5もまだまだ現役です。ということはハードにしてもi386やi486のCPUでもまだまだ使えるということです。データベースはデータが命ですから・・・。




桐ver.5に至るまで

 1986年5月、リレーショナルデータベースソフト「桐」が始めて世に登場する。
 1987年6月、「桐ver.2」にバージョンアップされ、その完成度の高さには定評があったが一般のユーザーが利用するには少し難しすぎる嫌いがあると評価された。
 1990年7月、「桐ver.3」登場。初期メニューこそver.2とそっくりだが、内容は大幅に改良され、それまで一部の専門家しか扱えなかったリレーショナルデータベースが一般ユーザーにも扱いやすいものになった。ver.3の登場で桐ユーザーが爆発的に増え、1991年日経パソコン誌の読者が選ぶベストソフト賞を受賞する。
  **桐ver.3の特徴**
 ファンクションメニューに加え、スラッシュメニュー(ポップアップメニューの追加)
 表の自動作成と変更(表計算ライクな画面、編集中の項目属性の変更)
 ビジュアルな編集画面(ver.2までのテキストだけの画面から罫線や背景色を指定して見栄えがよくなった)
 表形式画面とカード形式画面のワンタッチ切り替え
 25行モードと行間罫線の採用により1画面での情報量が増えた。
 マルチファイルの編集(複数の表を同時に開いて編集が可能になった。)
 編集機能とデータ処理機能の強化
 2次元集計(転置集計機能の追加)
 履歴機能の追加
 見栄えに重点を置いたためか、処理速度は落ちてしまった。
 1992年6月、「桐ver.4」登場。処理速度をver.2並にもどし、さらに機能を強化した。初期メニューも一新された。
  **桐ver.4の特徴**
 処理速度の高速化
 LAN対応
 バーコード印刷
 履歴による一括処理の作成
 一覧表、帳票印刷の強化
 マルチレコードフォーム(画面伝票)の追加
 1993年3月には、ハイレゾ対応版、IBMDOS/V版、富士通FMR版「桐ver.4」も追加発売された。
 1994年1月、「桐ver.5」の登場。外観はver.4に似ているが、データベースエンジンの改良等中身は大幅に変更されパワーアップした。また、システム本体が機種に依存しなくなり、同じシステムでPC-98、IBMDOS/V機(後に他のDOS/V機にも対応)等どの機種でも使用できるようになった。
 1994年6月には仕様を若干セーブした「myclass桐」を手頃な価格で発売した。
  **桐ver.5の特徴**
 データベースの基本仕様の拡張(項目数、レコード長、最大表ファイルサイズの拡張)
 印刷機能の強化(レイアウト表示、縦段組、松文書ファイルの出力等)
 インターフェースの向上
 処理の高速化
 編集機能の強化
 行集計機能の強化(任意の項目値の集計が可能になり、集計条件に計算式が指定できるようになった。)
 ファイル管理機能の強化
 機種依存しないシステム設計
 自然画を表示可能
 子プロセスの実行(システムコマンド)
 データコンバートの強化(Lotus1-2-3のファイルを直接開くことができる)
 グラフ機能の強化
 ネットワーク対応OSの追加
 関数、一括処理コマンドの強化

桐ver.5登場の1年半後にWindows95が発売され、世の中は一気にWindows95一色になり、他のDOS版ソフトは色あせて見えたが、それでも桐ver.5は、特に法人向けに需要があり、日経BP社が1997年に行ったパソコンベストソフトのデータベース分野でAccess、クラリスのファイルメーカーProに続いて3位に食い込むほどの高い指示を受けている。業務処理を行う企業から個人ユーザーまで、DOS版桐は累計で200万のユーザーがいたと言われており、日本を代表するデータベースソフトであった。




桐ver5の仕様

対応OS NEC MS−DOSver3.3D以上
富士通 MS−DOSv3.1レベル35B以降
IBM DOSverJ5.02/VリリースD以上
EPSON MS−DOSver5.0Rel2.0以上
MS−DOS V6.2/V
CPU i386以上
対応機種 NEC PC−9800シリーズ
EPSON PC−486シリーズ、PC−586シリーズ
日本IBM PSシリーズ
富士通 FMRシリーズ、FMVシリーズ
日本DEC DECpcLPv+シリーズ他
COMPAQ DESKPRO XEシリーズ他
日立 FLORAシリーズ
松下電器産業 PRONOTEjetシリーズ、panacomV24シリーズ
東芝 DynaBookシリーズ他
上記のメーカーの中でも動作保証していないものもあります。
また、上記以外の機種で動作するものもあります。(DOS/V機等)
メインメモリ 640KB(日本語FEPを除いて約450KB程度の空きメモリが必要)
EMSメモリ 512KB〜3.2MB
ファイルの同時オープン 14〜23個
同時に編集可能な表の数 5表
プリンタドライバ 6個
変数 400個
日付計算の範囲 西暦100年1月1日から9999年12月31日
和暦明治元年10月1日より
レコード数 表ファイルが512MB以内であれば制限なし
レコード長 2,000文字/レコード
項目数 255項目/表
項目名 全角、半角に関係なく20文字
データ型 文字列
数値・通貨(有効桁数は16桁)
整数(−32768〜32767)
表示幅 文字列(80文字)その他160桁
値集合 80個
索引数 30個/表
整列項目数 10項目/索引
整列順 文字符号順、文字符号逆順、辞書順、辞書逆順、昇順、降順
検索条件登録 9個/表
グラフ属性登録 6個/表
一覧表印刷属性登録 3個/表
検索条件数 9個/表
比較式の数 120条件/1検索あたり
AND検索 制限なし
OR検索 6個
選択の深さ 5レベル
行集計条件のグループ数 10項目/集計条件
行集計のレベル 小計、中計、大計、総計
転置集計条件のグループ数 10項目/集計条件
転置集計の種類 合計、平均、最大、最小、件数
履歴 20個/履歴ファイル
グラフ属性数 6個/表
グラフ種別(主・副) 標準棒、積み上げ棒、構成比棒、折れ線、近似曲線、標準層、構成比層
グラフ種別(主のみ) 多重円、並列円、標準レーダ、並列レーダ、散布図、株価、SD棒、SD折れ線、絵グラフ
グラフ印刷倍率 1〜3倍
帳票の領域設定可能数 512個/帳票
帳票の集計領域数 100個/帳票
帳票の図形領域数 3個/帳票の各部
帳票の領域種別 項目、文字列、計算式、小計、中計、大計、総計、頁計、図形(文書・テキスト)
バーコード(JAN・CODE39・CODE39(CC)・NW−7)
帳票の印刷部数 100部
帳票の頁番号 1〜30,000ページ
一覧表属性数 3個/表
一覧表の項目飾り 縦罫線20項目、網掛け20項目、字体20項目、バーコード20項目/一覧表属性
一覧表の段組印刷 10段(縦または横のいずれかのみ指定可能)
一覧表のグループ印刷 20項目/一覧表属性
一覧表の改頁グループ 20項目/一覧表属性
一覧表の改段グループ 20項目/一覧表属性
一括処理の名札数 630個
一括処理の制御構造の入れ子 100重
一括処理の手続きの入れ子 20重

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